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| 《「きものを造る」喜びを知ってしまった彼は、けっしてあせらない。実に悠々と仕事をしている。昔はいろいろな技術を試みたが、絣などにはもう興味がなくなって、織物は無地か縞に止どめをさすといっている。だから多くの色も使わない。こまかい絣や多彩な色は、生地の美しさを殺すからである。自分の技巧を披露するよりも、自然の素材を尊重したいに違いない。ひと月に二反織れば生活できるといって、後はもっぱらいい糸を探すことにかかっている。今年八十三歳になる加藤唐九郎は、五十年分の陶土を確保しているといったが、作家の気持とはそうしたものであろう。そういう彼の生活態度は、「時間を忘れ、金に換えることを忘れた糸」そのもののように見える。むさぼることを知らない暮しは、けっして楽ではないと思うが、まことに豊かで、充実しており、こういう人間がいる間は、日本の工芸も安心していられると思う。》
(「糸に学ぶ──田島隆夫」より) |
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